第31回 日本精神科病院協会精神医学会   発表抄録

          平成15年7月10日・11日

        於  北海道札幌市   札幌コンベンションセンター

                 管理部  片山淳一
当院作成が作成した「離院時対応マニュアル」の紹介
【 はじめに 】
離院は、患者さんの生命の安全や、地域社会に様々な影響を及ぼしかねない重大な事故である。
しかも、それは予期せぬ時に起こり、更に、発生後は可及的速やかに解決をしなければならないという側面を有している。
これまでに発生した経過を分析・事故解決までの経緯を検証した結果を踏まえ、「 離院時対応マニュアル 」を作成した。
マニュアルの紹介と、運用の実際を若干の考察を加え報告する。
【 マニュアル作成の契機 】
当院は、精神科一般病棟(3単位・開放50床、閉鎖100床)・老人性痴呆疾患療養病棟(48床)からなる精神病院である。平成15年1月、休日の夕刻過ぎというスタッフ数が少ない状況下で離院が発生した。
スタッフを収集し、警察にも協力を得て捜索した結果、外傷等なく、発生から4時間弱で発見に至った。
患者さんは目立った症状は認められず、当日に突如「家に帰れ」という幻聴に支配されてのちに行動に至ったことから、離院を予見することは不可能であった。これを契機に、これまで大掛かりな捜索を行ったことがなかったため、当事スタッフが、偶発な離院に、限られた時間で対処する準備が整っていなかったことが分かった。
今後の離院発生に備え、対応方法を規定し、全スタッフに周知徹底することが必要となった。
学会発表時使用のポスターはこちらです
【 本マニュアルの特長 】
離院発生時は、自殺や自傷他害、交通事故等の発生に加え、冬場であれば凍死の可能性も否定できない。
また、ご家族や行政等への通報は、早すぎても遅すぎてもよくなく、判断に迷うところである。
本マニュアルの特長は、

@ どの時点で「離院」と判断するかの定義を明確化

A 組織的な捜索体制を短時間で作ることが可能

B 管理者不在時でも、捜索体制の編成が容易に行える

C 離院発生事実や捜索状況、協力依頼等について、いつ、誰に通報すればよいか明確
  
D 住宅地図を活用したローラー作戦実施エリアを、時間の経過と共に如何に拡げていくかが明確
  
である。
以上から、組織的対応が可能で、短時間に無駄のない捜索が行えるようになり、離院に伴う二次被害を未然に防止できるようになった。幸いにして、マニュアル作成後、離院は発生していない。
城山病院