【目的】
 社会環境要因を背景とする心理的ストレス顕在時の頻拍化には、ことに副交感神経の活動低下が関与することを既に報告した。そこで今回は、寛解期の自律神経活動に注目して、Holter心電図による時系列検討を加えた。


【対象・方法】
 対象は、精神状態像・心理検査の両面より寛解期と判断された20例(男性8例、女性12例)、年齢24〜91歳(平均62歳)。Holter心電図解析は、(1)時間領域:連続する5分毎の区間に区切り、2個連続する洞性心拍のQRS間隔(NND)、NNDの変動係数(CVRR)と標準偏差(SDNN)、(2)周波数領域:副交感神経により修飾された交感神経活動の指標とされる低周波数成分(LF)、副交感神経活動の指標とされる高周波成分(HF)、LF/HF、および全周波数成分(TF)について検討を加えた。


【結果】
 NND(M±SD)は、925.5±171.5msecであり、21:00〜7:00までの時間帯が平均値を上回る徐拍化を呈した。CVRRは、午前中高値で、時間の経過に連れ低値化したが、SDNNには、経時的特徴を認めなかった。周波数領域は、HFの場合、21:00以後の連続12時間弱の時間帯が平均値を上回り、NNDに類似の時系列曲線を示した反面、LFには、特徴的日内変動を見出しえなかった。また、LFとHFは、両者間、年齢、NND、CVRR、TFとの間に有意な相関を認めた。一方、LF/HFは、夜間帯を低値で推移する日内変動を示した。


【まとめ】
 寛解期の24時間心拍数は、抗精神薬物連用条件下にありながらも、頻拍化を呈することなく、NNDとHFとの間に密接な関連性を有する日内変動を認めた。したがって、寛解期における正常脈性の心拍変動は、副交感神経優位に支配制御されるものと考えられる。









                              

精神状態像と心拍変動との関連(第2報)

−寛解期の心拍変動に関する検討−