パターン1 (急性の恐怖、憤怒、愕然)

“鋭い視線をしたドーベルマンが突如目の前に現れる”

 

こんな場面に直面しますと、だれしも、激しい恐怖心から瞬時に髪が逆立ち、心臓
がドキドキ(鼓動の高まり)して、脈も速くなります。この役割を演じるのが自律神経です。
自律神経は、危険を察知したその瞬間から迅速に反応して、一刻も早く身の危険から
逃れ、安全な場所に走り込むための準備をします。

 とにかく一刻を争う場面、走り出す前に“ペットボトルの水で喉の渇きを癒す、腹ごし
らえをする”など、そんな余裕は、とてもありません。胃や腸などの消化器系は、安全な
場所に逃れるまで、必要最小な機能さえあれば、なんら差し支えありません。早い話、
消化器系を循環している血液は、必要最小量で済むわけです。それ以外の血液は、
手足の血管が開くことで、走る臓器である筋肉へと動員されます。脈も速くなります
で、筋肉には、普段よりはるかに多量の血液が送り込まれます。さらに、全速力で走る
には、多くの酸素を必要とするため、空気の通り道である
気道が拡張します。また、忘
れてならないのは、安全な場所を探し出すため、
視界をより広くすること急務なため、
瞳孔が大きく
なります。
 このような一連の変化は、生体防御の最前線を担う自律神経のうち、交感神経の機
能が急速に活発
(表の+++となり、副交感神経機能が逆に低下(表のしてしまう
「パターン1の反応」によるものです。
 補足)食後に直ぐキャッチボールなどの運動をすると、吐き気がしたりして、気分が悪
くなります。その理由は、いたって簡単。食事中は、当然のことながら、食物を消化しな
ければならないため、唾液や胃液など、消化管液が多量に分泌されます。これは、副
交感神経機能が活発化するためです。にもかかわらず、食べるやいなや、運動すると
いうことは、消化管活動を促進している副交感神経の機能が弱まり、“行動の主役”で
ある交感神経機能が活発化するからにほかなりません。つまり、食後直ぐに運動すると
いうことは、自律神経が
“鋭い視線をしたドーベルマンが突如目の前に現れる”活動パ
ターンへと切り替わるためです。